シリーズ「この物件、買っていい?」では、実際に売りに出ている物件の数字を借りて、Propilarで判定します。
第5回は、埼玉県日高市・JR川越線「武蔵高萩」駅から徒歩2分の木造アパート。価格2,400万円で、表面利回りは 21.55%。シリーズでいちばん高い利回りです。ところが、この21.55%は「満室になったら」の数字でした。
ℹ この記事の前提
物件の数字は、2026年10月に不動産ポータルサイトへ掲載されていた実在物件のものです。最寄り駅と徒歩分数のみ掲載し、番地・物件名・販売会社は伏せています。融資条件(金利・借入割合・期間)と空室率は、判定のために置いた仮定です。判定結果は入力条件と評価基準によって変わります。投資判断はご自身の責任で行ってください。
対象物件
物件種別: 1棟アパート(木造2階建て・10戸)
最寄り駅: JR川越線「武蔵高萩」駅 徒歩2分
築年: 1974年築
物件価格: 2,400万円
表面利回り: 21.55%(満室想定の年間賃料 517.2万円 / 月43.1万円)
現況: 10戸中5戸が賃貸中(現況の年間賃料 217.2万円)
掲載情報の注意事項には、次のように書かれていました。
- 総戸数10戸のうち、賃貸中は5戸
- 空室の家賃は、1戸あたり月5万円で想定
- 現況の年間収入は217.2万円
つまり表面利回り21.55%は、いま空いている5戸が、月5万円ですべて埋まった場合の数字です。今の家賃収入で計算し直すと、利回りは 9.05%(217.2万円 ÷ 2,400万円)まで下がります。
判定に使った仮定は次のとおりです。
借入額: 2,160万円(物件価格の9割)
金利: 2.5%
返済期間: 15年(築古の木造のため短めに設定)
判定1:満室想定なら「収支良好」
まず掲載どおり、満室想定の家賃(月43.1万円)に空室率10%を置いて判定しました。
| 指標 | 結果 | Propilarの目安 |
|---|---|---|
| 実質利回り(FCR) | 16.14% | 5%以上で良好 |
| 月次キャッシュフロー | +204,807円 | プラスであること |
| DSCR | 2.42 | 1.3以上で良好、1.0未満はリスク |
| BER(損益分岐入居率) | 41.5% | 70%以下で良好、85%超はリスク |
| CCR(自己資金配当率) | 56.60% | 5%以上で良好 |
判定は 「収支良好」。3つのストレスシナリオでも黒字を保ち、自己資金434.2万円を約2.3年で回収できる計算です。数字だけを見れば、文句のない物件に見えます。
判定2:今の家賃のままなら「リスク要因多い」
次に、家賃を現況の月18.1万円(年217.2万円)に変えて判定しました。空室はすでに家賃に反映されているので、空室率は0%にしています。
| 指標 | 満室想定 | 現況の家賃 |
|---|---|---|
| 判定 | 収支良好 | リスク要因多い |
| 表面利回り | 21.55% | 9.05% |
| 実質利回り(FCR) | 16.14% | 7.37% |
| 月次キャッシュフロー | +204,807円 | +15,407円 |
| DSCR | 2.42 | 1.11 |
| BER | 41.5% | 90.5% |
月次キャッシュフローはかろうじて黒字です。しかしBERは90.5%で、今の家賃収入から1割減っただけで赤字になる水準です。3つのストレスシナリオのうち2つで赤字に転落し、判定は「収支良好」から 「リスク要因多い」 へ、最も良い判定から最も悪い判定まで動きました。
⚠ 「満室想定」の利回りは、まだ実現していない数字
物件価格は同じでも、家賃が「想定」か「現況」かで判定は正反対になります。空室の多い物件では、掲載の表面利回りではなく、レントロール(現在の賃料一覧)で計算した現況利回りから判断してください。
空室5戸は、本当に月5万円で埋まるか
満室想定の数字が実現するかどうかは、空室5戸が月5万円で埋まるかにかかっています。ここで気になる点があります。
現況の年間賃料217.2万円を5戸で割ると、いま入居している部屋の家賃は平均で月約3.6万円です。ところが空室は月5万円で埋まる想定になっています。同じ建物で、空いている部屋だけが4割高く貸せるとは限りません。
現況の入居中5戸: 平均 月約3.6万円/戸(217.2万円 ÷ 5戸 ÷ 12か月)
空室5戸の想定: 月5.0万円/戸
空室を埋めるには、原状回復やリフォームの費用もかかります。今回の判定には、この費用は入っていません。
ほかに確認したいこと
- 旧耐震基準: 1974年築で、1981年6月より前の旧耐震基準の建物です。耐震性と、地震保険・融資への影響を確認しましょう
- 融資が付くか: 木造の法定耐用年数は22年で、この物件はすでに超えています。返済期間15年は仮定です。金融機関によっては融資が付かない、またはもっと短い期間になります
- 空室の理由: 駅徒歩2分なのに半分が空いています。家賃設定・部屋の状態・募集の方法のどこに原因があるかを、管理会社や近隣の募集状況で確かめましょう
この物件の条件で、自分でも判定してみる
上の物件価格・満室想定の家賃・融資条件を入力した状態でPropilarが開きます(登録不要)。想定月額賃料を181,000円・空室率を0%に変えると、現況の家賃での判定になります。
この条件でPropilarを開くまだ物件がない方は → 購入前チェックリスト20項目(無料PDF)
まとめ
- 武蔵高萩駅 徒歩2分・2,400万円の木造アパート(10戸・表面利回り21.55%)は、満室想定なら 「収支良好」(月20.5万円の黒字、DSCR 2.42)
- しかし10戸中5戸が空室で、今の家賃のままだと利回りは9.05%、判定は 「リスク要因多い」(BER 90.5%)
- 満室想定の実現には、入居中の部屋(平均 月約3.6万円)より高い月5万円で、空室5戸を埋める必要がある
- 空室の多い物件は、表面利回りではなく現況の家賃から判断する
シリーズでは今後も、実際に掲載されている物件の数字で「買っていいか」を判定していきます。