「利回り6%台、駅徒歩10分、14戸の満室想定」——首都圏の不動産投資でよく見かける条件です。この数字なら、毎月いくら手元に残るでしょうか。
シリーズ「この物件、買っていい?」では、実際に売りに出ている物件の数字を借りて、Propilarで判定します。第2回は、埼玉県川口市・JR京浜東北線「西川口」駅から徒歩10分の1棟マンションです。
ℹ この記事の前提
物件の数字は、2026年10月に不動産ポータルサイトへ掲載されていた実在物件のものです。最寄り駅と徒歩分数のみ掲載し、番地・物件名・販売会社は伏せています。融資条件(金利・借入割合・期間)と空室率は、判定のために置いた仮定です。判定結果は入力条件と評価基準によって変わります。投資判断はご自身の責任で行ってください。
対象物件
物件種別: 1棟マンション(鉄骨造3階建て・1R×14戸)
最寄り駅: JR京浜東北線「西川口」駅 徒歩10分
築年: 1988年築
専有面積: 各14.29㎡
物件価格: 1億2,580万円
表面利回り: 6.03%(満室想定の年間賃料 約759万円 / 月63.3万円)
1戸あたりの家賃は平均で約4.5万円。都心へ出やすい京浜東北線沿線で、単身者向けのワンルームを14戸そろえた物件です。
判定に使った仮定は次のとおりです。
借入額: 1億1,322万円(物件価格の9割)
金利: 2.5%
返済期間: 20年
空室率: 10%
返済期間は20年としました。鉄骨造の法定耐用年数は34年で、築38年のこの物件はすでに超えています。耐用年数を超えた物件に長い融資が付くかは金融機関しだいで、20年でも楽観的な仮定です。
判定:リスク要因多い
Propilarの判定は 「リスク要因多い」 でした。
| 指標 | 結果 | Propilarの目安 |
|---|---|---|
| 実質利回り(FCR) | 4.23% | 5%以上で良好、3%未満で要注意 |
| 月次キャッシュフロー | −121,199円 | プラスであること |
| DSCR | 0.80 | 1.3以上で良好、1.0未満はリスク |
| BER(損益分岐入居率) | 108.2% | 70%以下で良好、85%超はリスク |
| CCR(自己資金配当率) | −6.46% | 5%以上で良好、0%未満はリスク |
リスク要因として挙がったのは、CCR・月次CF・NPV・DSCR・BER・感度分析の6つ。金利上昇・空室増加・賃料下落の3つのストレスシナリオすべてで、税引前キャッシュフローが赤字になります。
なぜ赤字になるのか
1. 返済が純収益を上回っている(DSCR 0.80)
お金の流れを1年分で追うと、次のようになります(運営費・NOI・年間返済額は、Propilarの結果から逆算した概算です)。
満室想定の年間賃料(GPI): 759.6万円
空室損(10%): −76.0万円
空室を引いた収入(EGI): 683.6万円
運営費: 約−110万円
運営費を引いた純収益(NOI): 約574万円
年間のローン返済額: 約−720万円
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手残り(税引前CF): 約−145万円(月 約−12.1万円)
DSCR(NOI ÷ 年間返済額)が 0.80 ということは、家賃から経費を払った残りで、返済の8割しか払えないという意味です。残りの約145万円は、毎年ご自身の財布から出ていきます。
→ DSCRの詳しい意味は「DSCRとは?」で解説しています。
2. 14戸すべて埋まっても赤字(BER 108.2%)
BER(損益分岐入居率)は、「経費と返済を払って収支がトントンになる入居率」です。この物件は 108.2%。
入居率は100%を超えられないので、14戸すべてが埋まっていても赤字です。空室が1戸出るごとに、さらに年54万円ほど(4.5万円×12か月)手残りが減ります。
3. 返済期間が短いと、借りるほど損をする(FCR 4.23% < K% 6.36%)
借入で収益を増やせるか(レバレッジの正負)は、2つの方法で判定できます。
- 金利で比べる(簡易判定): FCR 4.23% − 金利 2.5% = +1.73%。この基準では「プラス」に見えます
- K%(ローン定数)で比べる(Propilarの判定): K%は「年間の元利返済額 ÷ 借入額」で、20年返済では 6.36%。FCR 4.23%はこれを下回るため、**借りるほど手残りが減る「逆レバレッジ」**です
#1(駅徒歩5分の木造アパート)は25年返済でK%が5.38%でした。今回は返済期間が5年短いぶん、毎年返す元本が増え、K%が約1ポイント高くなっています。
⚠ 「築古だから融資期間が短い」は収支に直撃する
築年数が法定耐用年数を超えた物件は、融資期間が短くなりがちです。期間が短いほど毎年の元本返済が重くなり、利回りが同じでもキャッシュフローは悪化します。物件を比べるときは、利回りと一緒に「何年で借りられるか」を確認しましょう。
自己資金をいくら入れれば収支がトントンになるか
この物件で、毎月の持ち出しをなくすには、どこまで借入を減らせばよいか。Propilarで借入額を動かして確かめました。
借入額: 9,000万円(借入比率 約72%)
自己資金: 約4,527万円(諸経費を含む)
月次CF: +1,844円
DSCR: 1.00
判定: リスク要因多い(変わらず)
4,500万円以上の自己資金を入れて、ようやく収支がトントン。それでも判定は「リスク要因多い」のままです。DSCRが1.0ちょうどでは、空室が1戸出るだけで赤字に戻るためです。
数字だけで見れば、判定を変えるには価格交渉(利回りを上げる)か、より長い融資期間が必要です。
この物件の条件で、自分でも判定してみる
上の物件価格・賃料・融資条件を入力した状態でPropilarが開きます(登録不要)。借入額や返済期間を変えて、どこで判定が変わるか試してみてください。所在地を入れると地域需要も含めて判定できます。
この条件でPropilarを開くまとめ
- 西川口駅 徒歩10分・1億2,580万円の1棟マンション(1R×14戸・表面利回り6.03%)を、融資9割・金利2.5%・20年で判定すると 「リスク要因多い」
- DSCR 0.80、BER 108.2%で、満室でも毎月約12.1万円の持ち出し
- 金利基準ではプラスに見えるが、20年返済のK% 6.36%と比べると逆レバレッジ
- 自己資金を約4,500万円入れても、月次CFはようやく±0
- 築古物件は融資期間の短さが収支を大きく左右する
次回は、埼玉県飯能市・飯能駅徒歩4分、表面利回り8.89%の1棟マンションを判定します。