「表面利回り8%なのに思ったより手元に残らない」という悩みは、ランニングコストの見落としが原因であることが多いです。不動産投資では家賃収入からローン返済を引いた金額が手残りだと誤解されがちですが、実際にはさまざまな運営費用が発生します。正確な収支を把握するためにも、ランニングコストの全体像を事前に理解しておくことが重要です。
ランニングコストの全体一覧
不動産投資で毎年発生する主な費用を整理します。
| 費用項目 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 管理委託費 | 賃料収入の5〜10% | 管理会社に委託する場合 |
| 修繕積立金 | 賃料収入の3〜7% | 将来の大規模修繕に備えて積み立て |
| 固定資産税 | 固定資産税評価額 × 1.4% | 毎年課税 |
| 都市計画税 | 固定資産税評価額 × 0.3% | 市街化区域のみ |
| 損害保険料 | 年間数万〜十数万円 | 火災保険・地震保険 |
| 電気・水道・共用部費 | 月数千円〜数万円 | 共用部の照明・給水ポンプ等 |
| 広告料(入居者募集) | 家賃1〜2ヶ月分 | 空室発生のたびに発生 |
| 原状回復費 | 1室あたり数万〜十数万円 | 退去のたびに発生 |
| 税理士報酬 | 年間数万〜数十万円 | 確定申告を委託する場合 |
| その他維持費 | 年間数万円 | 清掃・除草・消耗品等 |
これらを合計すると、賃料収入の20〜30%が運営費用として出ていくのが一般的な目安です。
よく見落とされる費用
空室期間の固定費
空室になっても固定資産税・保険料・管理費(最低管理費)・共用部費用は発生し続けます。「空室中は費用がかからない」という認識は間違いです。
【空室1ヶ月の損失イメージ】
家賃8万円の物件が1ヶ月空室になった場合
逸失収入:8万円
発生する固定費(月割り):
- 固定資産税:約15,000円/月(年18万円÷12)
- 保険料:約2,000円/月(年2.4万円÷12)
- 共用部電気代:約3,000円/月
合計固定費:約20,000円/月
空室1ヶ月の実質損失:8万円 + 2万円 = 10万円
原状回復費
退去時に発生するクリーニング・壁紙・設備修繕の費用です。入居者負担分を差し引いても、貸主負担分として数万円〜十数万円が必要なケースがあります。
2年〜3年に1度の退去を想定すると、年均しで数万円の費用として見込む必要があります。
広告料(客付け費用)
空室を埋めるために仲介会社に支払う費用です。一般的には家賃1〜2ヶ月分が相場です。
入居者が退去するたびに発生するため、回転率が高い物件(学生向け単身物件など)では年間コストとして無視できない金額になります。
⚠ 広告料が高すぎる場合の注意
賃貸市場の競争が激しいエリアでは、仲介会社が「広告料2ヶ月」を要求するケースがあります。毎回2ヶ月分を支払い続けると、年間収益への影響が大きくなります。広告料が常時1ヶ月超になるようであれば、物件の魅力や管理会社の客付け力を見直す必要があります。
費用率の目安:賃料収入の20〜30%
実務的な目安として、賃料収入の20〜30%を運営費用(Operating Expense)として見込むのが適切です。
【費用率の計算例】
賃料収入(年間):120万円(10万円/月 × 12ヶ月)
運営費用の目安(25%):120万円 × 25% = 30万円/年
内訳イメージ:
管理委託費(7%):8.4万円
修繕積立(5%):6万円
固定資産税・都市計画税:10万円
損害保険料:2万円
原状回復・広告料(年均し):3.6万円
合計:30万円(25%)
物件の条件によって費用率は変わります:
- 新築・RC造:修繕費が少なく費用率15〜20%程度
- 築10〜20年・木造:修繕費増加で費用率20〜25%
- 築30年超・木造:大規模修繕リスクで費用率25〜35%以上も
ℹ 費用率を過小評価しない
物件購入前の収支シミュレーションでは、費用率を低めに設定してしまいがちです。「問題が起きなければ費用は少ない」という楽観的な前提は禁物で、修繕費・空室・原状回復は必ず発生するものとして見込んでおくことが実務的なアプローチです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間家賃収入 | 120万円 |
| ローン返済(年間) | ▲85万円 |
| 手残り(想定) | 35万円 |
「手残り35万円=表面利回り8%だから問題ない」と判断してしまうケース。管理費・固定資産税・修繕費・空室損失がまったく考慮されていない。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間家賃収入(空室5%考慮) | 114万円 |
| 管理委託費(7%) | ▲8万円 |
| 修繕積立(5%) | ▲6万円 |
| 固定資産税・都市計画税 | ▲10万円 |
| 損害保険料 | ▲2万円 |
| 原状回復・広告料(年均し) | ▲4万円 |
| NOI(純営業収益) | 84万円 |
| ローン返済(年間) | ▲85万円 |
| 税引前CF | ▲1万円(ほぼトントン) |
運営費25%を正しく見込むと、「手残り35万円」のはずが実質ほぼゼロになる。
FCRとNOIの計算での反映方法
ランニングコストを正確に反映した収益指標として、FCR(総収益率)とNOI(純営業収益)が使われます。
NOI(純営業収益)= GPI(潜在総収入)× 空室率調整 - 運営費用(OPEXすべて)
GPI:満室賃料収入(空室・フリーレントなし)
空室調整後収入(EGI)= GPI × (1 - 空室率)
NOI = EGI - OPEX
FCR(総収益率)= NOI ÷ 総投資額(物件価格 + 取得諸費用)
このNOIはローン返済前・税引き前の収益であり、ローン返済(元利金返済)を差し引いたものがキャッシュフロー(税引き前)になります。
表面利回りと比べてFCRが低い場合、その差分がランニングコストの影響です。
物件種別・築年数による費用率の違い
| 物件種別 | 築年数 | 費用率の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| RC造マンション | 新築〜10年 | 15〜20% | 修繕積立を怠らないこと |
| RC造マンション | 10〜25年 | 20〜28% | 大規模修繕(外壁・屋上)に備える |
| 木造アパート | 新築〜10年 | 18〜23% | 外壁・屋根は10〜15年で修繕 |
| 木造アパート | 20〜30年 | 25〜35% | 給排水・電気設備の更新も想定 |
| 区分マンション | 全築年数 | 管理費・修繕積立金が別途発生 | 管理組合の積立状況を確認 |
区分マンションの場合、管理費と修繕積立金は管理組合に毎月支払う費用として収支に含める必要があります。
ℹ 区分マンションの管理費と修繕積立金
区分マンションでは管理組合への管理費(月1〜3万円)と修繕積立金(月数千円〜数万円)が固定費として発生します。購入前に管理組合の修繕積立金の残高と積立計画を確認することが重要です。積立不足の物件は将来的に一時金徴収のリスクがあります。
ランニングコストを含めてシミュレーションする
Propilarでは管理費・修繕費・空室率・保険料・税金を細かく設定してNOI・キャッシュフローを計算できます。表面利回りだけでなく、実態に近い収益を確認してから投資判断してください。
ランニングコストを含めてシミュレーションするまとめ
- ランニングコストは賃料収入の20〜30%が一般的な目安
- 管理委託費・修繕積立・固定資産税・保険料に加え、空室中の固定費・原状回復費・広告料も見込む
- 空室1ヶ月の損失は「逸失収入 + 固定費」で実際は表面の損失より大きい
- 正確な収益計算にはNOI(純営業収益)とFCRを使い、運営費用をすべて反映する
- 築年数・物件種別によって費用率は大きく異なり、築古ほど費用率が上がる傾向がある
- 区分マンションは管理費・修繕積立金が固定費として追加される
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