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レントロールの読み方|満室想定の裏を数字で確認する

レントロールは物件の収益力を判断する最重要資料です。賃料のばらつき、入居時期の偏り、フリーレントなど、見落とすと収支が崩れるチェックポイントを解説します。

物件資料の「満室想定年収480万円」という数字だけを見て利回りを計算していませんか。その数字が現実的かどうかは、レントロール(賃貸借条件一覧表)を1行ずつ読めば判断できます。

レントロールには、部屋ごとの賃料・入居日・契約形態・敷金が並んでいます。この表は単なる一覧ではなく、物件の過去と未来が読み取れる資料です。同じ間取りなのに賃料が違う、入居日が全室同じ月に集中している——こうした痕跡から、購入後に起きることが見えてきます。

この記事では、レントロールのどこを見れば収支の崩れを事前に検知できるかを、具体的なチェックポイントで整理します。

レントロールの基本項目

まず、レントロールに何が載っているかを確認します。

項目内容読み取れること
部屋番号・間取り・面積各住戸の基本情報同条件の部屋を比較する軸
現行賃料現在の月額賃料賃料のばらつき、相場との乖離
共益費・管理費賃料とは別に徴収する額実質賃料の把握
入居日・契約日いつから入居しているか退去リスク、賃料の新旧
契約期間・更新日契約の残存期間短期集中退去のリスク
契約形態普通借家 / 定期借家賃料改定・明渡しの自由度
敷金・保証金預り金の額引継ぎ額(買主の負担)
入居者属性個人 / 法人 / 学生等需要の性質、退去サイクル

ℹ 満室想定と現況は別物

物件資料の利回りは「満室想定賃料」で計算されているのが通常です。レントロールを見れば現在の空室が分かり、空室部分の想定賃料が現行の入居部屋と整合しているかも確認できます。まず現況賃料の合計を自分で足し上げ、資料の満室想定と何%乖離しているかを把握してください。

チェックポイント1:賃料のばらつき

同じ間取り・同じ面積の部屋で賃料が違う場合、そこには必ず理由があります。

例:1K・20㎡が6戸ある木造アパート

101号室  68,000円  入居日:2018年3月
102号室  68,000円  入居日:2018年3月
201号室  62,000円  入居日:2023年4月
202号室  61,000円  入居日:2024年9月
203号室  60,000円  入居日:2025年11月
204号室  空室(想定68,000円)

現況賃料合計:319,000円 / 月
満室想定(資料):408,000円 / 月(68,000円 × 6戸)

この表から読み取れることは明確です。

  • 古い契約ほど賃料が高い:2018年入居は68,000円、2025年入居は60,000円
  • 直近の成約賃料は60,000〜62,000円:これが現在の市場実勢
  • 空室の想定賃料68,000円は非現実的:直近実績から見て60,000円前後が妥当
資料の満室想定で計算

満室想定賃料:68,000円 × 6戸
年間賃料収入:489.6万円
物件価格:5,000万円
表面利回り:9.79%

直近成約賃料で再計算

実勢賃料:60,000円 × 6戸
年間賃料収入:432.0万円
物件価格:5,000万円
表面利回り:8.64%
→ 差は1.15ポイント。年間57.6万円の収入減

さらに重要なのは、高い賃料で入居している101・102号室もいずれ退去するということです。退去後は60,000円で募集することになるため、長期的には全戸が実勢賃料に収束します。

⚠ 古い高額契約は「時限爆弾」

築年数が古い物件ほど、入居時期の古い高額契約が残っています。これらの部屋の退去は避けられず、退去のたびに賃料が下がります。購入時のレントロールが最も収益性の高い状態であり、そこから下がっていくのが基本線です。現況賃料ではなく直近の成約賃料をベースに収支計算してください。

チェックポイント2:入居日の偏り

入居日が特定の時期に集中している場合、注意が必要です。

危険なパターン

101号室  入居日:2026年5月
102号室  入居日:2026年5月
201号室  入居日:2026年6月
202号室  入居日:2026年6月
203号室  入居日:2026年4月
204号室  入居日:2026年6月

→ 全戸が直近3か月以内の入居
→ 売却の直前に一斉に埋めた可能性

売却前に空室を埋めると満室想定に近い収益で売り出せるため、売却直前の一斉入居は実務上よく見られます。この場合、以下を確認してください。

  • フリーレント(一定期間の賃料無料)の有無:契約書に記載があるか
  • 賃料が相場より高く設定されていないか:短期解約を織り込んだ強引な成約でないか
  • 広告料(AD)の水準:AD 3〜6か月など高額な条件で埋めていないか
  • 入居者の属性:関係者による形式的な入居(サクラ入居)でないか
フリーレント2か月付きの実質賃料

表示賃料:65,000円 / 月
フリーレント:2か月
1年目の実収入:65,000円 × 10か月 = 650,000円
実質月額:650,000円 ÷ 12 = 約54,167円

→ 表示より 約17% 低い

⚠ サクラ入居を疑うべきサイン

物件全体で以下が重なる場合は、実態のない入居を疑ってください。(1)売却直前の一斉入居、(2)相場より明らかに高い賃料、(3)敷金・礼金がゼロ、(4)入居者が全員同じ保証会社または保証会社なし。決済後まもなく一斉退去すると、想定した収益がまったく入らないまま返済だけが始まります。賃貸借契約書の原本、賃料の入金履歴(通帳)を必ず確認してください。

チェックポイント3:契約形態と更新時期

契約形態によって、購入後にできることが変わります。

契約形態賃料の値上げ契約終了
普通借家契約借主の同意が必要正当事由がなければ更新拒絶できない
定期借家契約再契約時に条件変更可期間満了で確実に終了する

普通借家契約が大半を占めるのが一般的ですが、更新時期が一時期に集中している場合は退去リスクも集中します。更新日が同じ月に3戸以上並んでいれば、その時期の空室リスクを織り込んでおく必要があります。

チェックポイント4:敷金・保証金の引継ぎ

敷金は入居者からの預り金であり、退去時に精算して返還する義務があります。物件を購入すると、この返還義務も承継されます。

敷金の引継ぎ

101号室:敷金 136,000円(賃料2か月)
102号室:敷金 136,000円
201号室:敷金  62,000円(賃料1か月)
202号室:敷金  61,000円
203号室:敷金       0円(敷金ゼロ物件)

引継ぎ額合計:395,000円

→ 決済時に売主から買主へ引き継がれる
→ 買主は将来の返還原資として認識しておく必要がある

決済時に売買代金から控除される形で精算されるのが一般的ですが、これは収入ではなく負債です。手元に入った敷金を運転資金として使い切ると、退去時の返還原資がなくなります。

実勢賃料ベースで収支を再計算しましょう

Propilarなら賃料・空室率を変えたときのNOI・FCR・DSCR・キャッシュフローを即座に再計算できます。満室想定ではなく実勢賃料で判断してください。

実勢賃料で利回りを計算し直す

チェックポイント5:滞納の有無

レントロールには通常「滞納」の欄がありませんが、必ず売主に確認すべき項目です。

確認すべき事項
□ 現在の滞納者の有無と滞納月数
□ 過去1年間の滞納発生件数
□ 家賃保証会社への加入状況(全戸/一部/なし)
□ 保証会社の名称と保証内容(滞納時の代位弁済範囲)
□ 訴訟・明渡し交渉中の入居者の有無

滞納者がいる状態で購入すると、回収も明渡しも買主の負担になります。明渡し訴訟には数か月と数十万円の費用がかかり、その間の賃料は入りません。

実務でのチェック手順

レントロール分析の手順

1. 現況賃料の合計を自分で足し上げる
   □ 資料の満室想定との乖離を確認
   □ 空室戸数と空室率を計算

2. 同一間取りの賃料を並べて比較する
   □ 入居日順に並べ替える
   □ 直近2年以内の成約賃料を特定する
   □ それを実勢賃料として採用する

3. 入居日の分布を確認する
   □ 直近3〜6か月に集中していないか
   □ 集中している場合はフリーレント・ADを確認

4. 契約形態と更新日を確認する
   □ 普通借家 / 定期借家の別
   □ 更新日の集中を確認

5. 敷金の引継ぎ額を把握する
   □ 返還義務として認識する

6. 売主に滞納状況を確認する
   □ 保証会社の加入状況を確認

7. 実勢賃料 + 現実的な空室率でNOIを再計算する
   □ FCR・DSCRを算出して判断する

✓ レントロールは「原本」で確認する

仲介会社が作成したレントロールは、売主のヒアリングをもとに整えられたものです。数字の裏付けは賃貸借契約書の原本賃料入金の通帳履歴にしかありません。買付を入れる前でも、契約前の段階では必ず原本の開示を求めてください。開示を渋られる場合、それ自体が重要な判断材料です。

まとめ

  • レントロールは物件の過去と未来が読み取れる資料。満室想定ではなく1行ずつ読む
  • 同一間取りで賃料が違う場合、入居日が古いほど賃料が高いのが典型。直近成約賃料が実勢
  • 例では満室想定9.79%が実勢賃料ベースで8.64%に。1.15ポイントの差が出た
  • 売却直前の一斉入居はフリーレント・高額AD・サクラ入居を疑う。契約書原本と入金履歴で裏を取る
  • 契約形態(普通借家 / 定期借家)で賃料改定と明渡しの自由度が変わる。更新日の集中も確認する
  • 敷金は収入ではなく負債。返還原資として確保しておく
  • 滞納状況と保証会社の加入は必ず売主に確認する。滞納者は買主が引き継ぐ
  • 最終判断は実勢賃料 + 現実的な空室率で再計算したFCR・DSCRで行う

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