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家賃滞納リスクと入居審査・家賃保証会社の使い方

家賃滞納は空室より損失が大きくなることがあります。滞納が発生する確率とコスト、入居審査の基準、家賃保証会社の選び方と保証範囲の見極め方を解説します。

空室は「収入がゼロになる」だけですが、家賃滞納は収入がゼロになった上に、費用が発生し、部屋も使えない状態です。損失の性質がまったく違います。

しかも日本の借地借家法では、賃料を払わない入居者を退去させるのに数か月から1年かかります。その間の賃料は入らず、訴訟費用と強制執行費用は貸主負担です。

この記事では、滞納が起きたときに実際にいくらの損失になるのか、それを防ぐ入居審査の基準、そして家賃保証会社をどう選び・どう使うべきかを整理します。

滞納が空室より損失が大きくなる理由

同じ「賃料が入らない」でも、空室と滞納では構造が異なります。

項目空室滞納
賃料収入ゼロゼロ
部屋の使用状況空いている(すぐ募集できる)占有されている(募集できない)
解消までの期間1〜3か月(募集次第)6〜12か月(法的手続きが必要)
追加費用広告料・原状回復費訴訟費用・強制執行費用・原状回復費
回収可能性低い(無資力の場合が多い)

⚠ 「払わないなら出ていってもらう」はできない

賃料を滞納されても、貸主が勝手に鍵を交換したり荷物を撤去したりすることは自力救済として違法です。損害賠償を請求されるリスクがあります。合法的な明渡しには、内容証明による催告 → 契約解除 → 明渡訴訟 → 判決 → 強制執行という手順が必要で、解除が認められるにも一般に3か月分程度の滞納が必要とされています。

滞納の実際のコスト

賃料7万円の部屋で滞納が発生し、明渡しまで至ったケースを試算します。

前提
月額賃料:70,000円
保証会社なし・連帯保証人あり(回収不能)

タイムライン
1〜3か月目   滞納発生・督促(賃料未回収 210,000円)
4か月目     内容証明で催告、契約解除通知
5か月目     明渡訴訟を提起(弁護士費用の着手金)
7か月目     判決確定
9か月目     強制執行(執行官・執行業者の手配)
10か月目    明渡完了・原状回復
11か月目    募集開始
12か月目    次の入居者が決定

損失の内訳
未回収賃料(10か月分)        700,000円
弁護士費用(着手金+報酬)      400,000円
訴訟費用(印紙・予納金等)       80,000円
強制執行費用(執行補助・保管)    350,000円
原状回復費(残置物処分含む)     250,000円
空室期間の逸失賃料(2か月)      140,000円

損失合計                  1,920,000円
空室が3か月続いた場合

逸失賃料:70,000円 × 3か月=210,000円
広告料(AD 1か月):70,000円
原状回復費:100,000円

損失合計:380,000円

滞納から明渡しに至った場合

未回収賃料(10か月):700,000円
弁護士・訴訟費用:480,000円
強制執行費用:350,000円
原状回復(残置物処分含む):250,000円
空室期間の逸失賃料:140,000円

損失合計:1,920,000円
→ 空室の約5倍

年間NOI 320万円の物件で1戸滞納が発生すると、その年のNOIの6割が消えます。DSCRは一気に悪化し、返済が自己資金からの持ち出しになる可能性があります。

入居審査で見るべき項目

滞納は入り口で防ぐのが最も費用対効果が高い対策です。管理会社任せにせず、審査基準を共有しておいてください。

審査項目確認内容目安
収入年収に対する賃料の比率月額賃料が月収の3分の1以下
就業状況勤務先・雇用形態・勤続年数勤続1年以上が望ましい
保証保証会社の審査結果承認が前提
連帯保証人属性・続柄・支払能力保証会社と併用が理想
過去の履歴前の住居での滞納歴、退去理由短期での転居の繰り返しは要確認
面談・対応申込書の記載の正確さ、連絡の取りやすさ記載漏れ・連絡不通は要注意
賃料負担率の目安

月額賃料 70,000円の場合
必要月収 = 70,000円 × 3 = 210,000円
必要年収 = 約252万円

月額賃料 100,000円の場合
必要月収 = 300,000円
必要年収 = 約360万円

ℹ 審査を厳しくしすぎると空室が長引く

入居審査は厳しくするほど滞納リスクは下がりますが、空室期間は長くなります。滞納の期待損失(発生確率 × 損失額)と、空室が1か月延びる損失を比較して、物件のグレードと立地に合った水準を決めてください。都心の需要が厚いエリアでは厳しく、地方で募集が難しいエリアでは保証会社の保証を厚くして基準を緩める、といった調整が現実的です。

家賃保証会社の仕組みと選び方

家賃保証会社は、入居者から保証料を受け取り、滞納時に貸主へ代位弁済(立替払い)する事業者です。

家賃保証会社が入る場合の流れ

入居者が滞納

保証会社が貸主へ賃料を立替払い(貸主の収入は途切れない)

保証会社が入居者へ求償(回収)

回収不能なら保証会社が明渡し手続きを進める

貸主にとっての価値は、賃料が途切れないこと訴訟・明渡しの手間と費用を負わないことの2点です。

保証内容の比較ポイント

保証会社によって保証範囲は大きく異なります。名称だけで判断せず、保証委託契約書で確認してください。

確認項目見るべき内容
保証限度額賃料の何か月分まで保証されるか(12〜24か月が一般的)
保証対象賃料のみか、共益費・更新料・原状回復費・残置物処分費も含むか
訴訟費用の負担明渡訴訟の費用を保証会社が負担するか
代位弁済の開始時期滞納何日目から支払われるか
免責事項どのような場合に保証されないか
更新時の取扱い契約更新時に保証が継続されるか、再審査があるか
会社の信用力保証会社自体の経営が安定しているか

⚠ 保証会社が倒産すると保証は消える

家賃保証会社に法定の免許制度はなく(国土交通省の登録制度は任意)、経営破綻すれば保証は履行されません。過去に保証会社の破綻で貸主が賃料を回収できなくなった事例があります。国土交通省の「家賃債務保証業者登録制度」への登録有無、資本金、業歴、取扱件数を確認し、可能であれば複数の保証会社を使い分けてリスクを分散してください。

滞納リスクを織り込んだ収支を確認しましょう

Propilarなら空室率・賃料を変えたときのNOI・DSCR・キャッシュフローを即座に再計算できます。1戸の滞納が返済にどう効くかを事前に確認してください。

滞納・空室シナリオで収支を試算する

保証会社を「全戸必須」にする

購入した物件に保証会社未加入の入居者がいる場合、既存契約に遡って加入を強制することはできません。しかし、以下の運用で徐々に全戸加入に近づけられます。

運用ルール
□ 新規募集はすべて保証会社加入を必須条件にする
□ 契約更新のタイミングで加入を打診する
□ 連帯保証人のみの契約は原則受け付けない
□ 保証会社の審査を通らない申込は見送る
□ 管理会社に上記を明文で指示し、例外承認は自分が行う

✓ 購入前のレントロールで保証加入率を確認する

物件購入時のデューデリジェンスでは、各戸の保証会社加入状況を必ず確認してください。加入率が低い物件は、購入後に滞納が発生したとき貸主が全リスクを負います。加入率が低い場合は、その分のリスクを価格交渉の材料にするか、購入後の入れ替わりで是正できる期間を織り込んで判断します。

滞納が発生したときの初動

保証会社に入っていても、貸主側の初動が遅れると回収が難しくなります。

初動の手順

支払期日の翌日
□ 管理会社が入金確認、未入金なら即日連絡

滞納3日目まで
□ 電話・訪問で入居者に連絡
□ 保証会社へ滞納発生を報告(多くの保証会社は報告期限を定めている)

滞納14日目まで
□ 書面で督促
□ 保証会社の代位弁済手続きを開始

滞納2〜3か月
□ 内容証明郵便で催告、契約解除の意思表示
□ 保証会社と明渡しの方針を協議

重要
□ 保証会社への報告が遅れると保証の対象外になることがある
□ 貸主が独自に鍵交換・荷物撤去を行うのは違法

⚠ 保証会社への報告遅れが最大の落とし穴

多くの保証委託契約には「滞納発生から○日以内に報告すること」という条項があり、この期限を過ぎると代位弁済が受けられなくなる場合があります。保証会社に入っているから安心ではなく、管理会社が期限内に報告する運用になっているかを確認してください。ここが機能していないと保証は絵に描いた餅になります。

まとめ

  • 滞納は空室と違い部屋が占有されたまま収入だけが止まる。募集もできず、解消に6〜12か月かかる
  • 試算では、賃料7万円の1戸が明渡しに至ると損失は約192万円。空室3か月(約38万円)の約5倍
  • 明渡しには法的手続きが必要。自力救済(鍵交換・荷物撤去)は違法
  • 入り口の対策が最も効く。賃料は月収の3分の1以下を基準に、勤続年数・過去の履歴も確認する
  • 審査を厳しくすると空室が延びる。滞納の期待損失と空室損失を比較して物件に合う水準を決める
  • 家賃保証会社は原則全戸必須にする。保証限度額・保証対象・訴訟費用負担・免責事項を契約書で確認する
  • 保証会社に法定の免許制度はない。登録制度への登録有無と経営の安定性を確認する
  • 最大の落とし穴は保証会社への報告遅れ。期限内に報告する運用になっているか管理会社と詰めておく

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