「新築と中古、どちらが有利か」は不動産投資の定番の問いです。答えは単純ではなく、利回り・融資・減価償却・修繕リスク・出口それぞれの観点で優劣が入れ替わります。「新築の方が安心」「中古の方が利回りが高い」という表面的な議論に留まらず、投資家としての自分の状況と目的に照らして判断することが重要です。
利回りの比較:新築は低く、中古は高い
まず表面利回りでは、一般的に新築より中古の方が高い傾向があります。
| 物件タイプ | 価格帯 | 表面利回り目安 |
|---|---|---|
| 新築区分マンション(都心) | 3,000万〜5,000万円 | 3〜4% |
| 新築一棟アパート(郊外) | 5,000万〜1億円 | 5〜7% |
| 中古区分マンション(築10〜20年) | 1,000万〜3,000万円 | 5〜8% |
| 中古一棟アパート(築10〜20年) | 3,000万〜8,000万円 | 7〜10% |
| 中古一棟(築20年超) | 1,000万〜5,000万円 | 9〜15% |
新築は「新築プレミアム」として価格が上乗せされており、それが利回りを押し下げます。中古は価格が下がった分だけ表面利回りが上がりますが、修繕リスクと賃料下落の余地が増すという裏側があります。
ℹ 表面利回りだけで判断しない
新築・中古いずれも、実際の投資判断はFCR(総収益率)とキャッシュフローで行います。中古の表面利回り12%でも、修繕費・空室期間を加味するとFCRが6%台になることがあります。
融資の比較:新築が有利、中古は築年数次第
融資においては一般的に新築が有利です。
新築のケース
- 建物の評価が高く、長期ローンを組みやすい
- 融資期間: RC造なら35〜40年、木造でも30年前後が可能
- 金利優遇を受けやすい(評価額に対する担保力が高い)
中古のケース
融資期間は「法定耐用年数 - 築年数」を基準に決まることが多く、築古物件ほど短くなります。
RC造(耐用年数47年)の例:
築10年 → 融資期間の目安 37年
築25年 → 融資期間の目安 22年
築35年 → 融資期間の目安 12年(月々返済額が大幅増)
木造(耐用年数22年)の例:
築10年 → 融資期間の目安 12年
築20年 → 残存耐用年数ほぼなし → 融資が難しい金融機関多数
融資期間が短くなると月々の返済額が増え、キャッシュフローが悪化します。同じ物件価格・金利でも、融資期間10年と30年では月々の返済額が大きく異なります。中古物件では融資条件の確認が先決です。
減価償却の比較:中古が有利なケースが多い
節税効果を重視するなら、中古が有利になるケースが多い。
減価償却費は「建物の取得価格 ÷ 耐用年数」で計算されます。新築より中古の方が耐用年数(残存年数)が短いため、同じ建物価格でも年間の減価償却費が大きくなります。
事例: 建物評価3,000万円のRC造物件
新築(耐用年数47年):
年間減価償却費 = 3,000万円 ÷ 47年 ≒ 63.8万円
築20年(残存耐用年数27年):
年間減価償却費 = 3,000万円 ÷ 27年 ≒ 111.1万円
築35年(簡便法適用の場合: 47×0.2≒9年):
年間減価償却費 = 3,000万円 ÷ 9年 ≒ 333.3万円
ℹ 簡便法による短期償却
法定耐用年数を超過した建物(または耐用年数の大半を経過した物件)は、簡便法により短い耐用年数(最短2年)が適用されます。これにより短期間で大きな減価償却費を計上でき、不動産所得と他の所得の損益通算で節税効果が得られます。
ただし、減価償却期間が終了すると節税効果はなくなります。また、売却時に計上した減価償却費の分だけ建物の取得費が下がり、譲渡税が増える点(減価償却の取り崩し)も考慮が必要です。
耐用年数: 47年
年間減価償却費: 約64万円
節税期間: 47年間
節税効果(所得税率30%仮定): 年19万円程度
特徴: 長期間安定して計上できる
残存耐用年数: 22年
年間減価償却費: 約136万円
節税期間: 22年間
節税効果(所得税率30%仮定): 年41万円程度
特徴: 短期間で大きく計上できる
修繕コストの比較:新築が有利だが過信は禁物
修繕コストは新築が有利です。
- 新築は設備・配管・外壁が新品のため、当面の大規模修繕が不要
- 建物保証(瑕疵担保責任)により、初期不良が発生しても対応される
- 中古は築年数に応じて設備の老朽化・修繕積立金不足のリスクがある
中古の修繕リスクを数値化すると:
修繕費の年間引当の目安(一棟アパートの場合):
・築0〜10年: 賃料収入の5%程度
・築10〜20年: 賃料収入の8〜10%程度
・築20年超: 賃料収入の10〜15%程度
修繕費を引いたNOIで投資判断すること
賃料下落曲線の違い
新築物件は入居当初の賃料が最も高く、築年数とともに徐々に下落します。
新築 → 入居開始時の賃料を100%とした場合:
築5年: 95〜100%
築10年: 88〜95%
築20年: 78〜88%
築30年: 70〜80%
(エリア・物件の質によって大きく異なる)
中古物件は既に賃料がある程度下落した水準から始まるため、追加の賃料下落幅が小さいという見方もあります。ただし、老朽化が進むとリノベーションなしには賃料維持が難しくなります。
出口戦略の比較
出口(売却)においては、新築・築浅物件が有利な傾向があります。
- 新築〜築10年: 実需(居住用)の買い手も付きやすく、高値での売却が期待できる
- 築10〜20年: 投資家向けの市場が中心になる
- 築20年超: 買い手は限定的。土地値・スクラップ価値での評価になる場合もある
⚠ 新築プレミアムは一度失われると戻らない
新築物件は入居した瞬間に「中古」となり、価格が下落します。新築で購入した物件を数年で売却しようとすると、購入価格を下回るリスクがあります。新築購入後は少なくとも10年程度の保有を前提にした計画が必要です。
どちらを選ぶべきか:目的別の整理
| 目的・状況 | 新築向き | 中古向き |
|---|---|---|
| 融資を長期で組みたい | ○ | △(築年数次第) |
| 節税効果を最大化したい | △ | ○ |
| 修繕リスクを避けたい | ○ | △ |
| 利回りを重視したい | △ | ○ |
| 管理の手間を減らしたい | ○ | △ |
| キャッシュフロー最大化 | △ | ○ |
| 長期保有前提 | ○ | ○ |
新築が向いている人
- 修繕リスクを最小化したい人
- 融資を長期で組み、月々のキャッシュフローを安定させたい人
- 物件管理の手間を最初から最小化したい人
- 建物の品質や保証に安心感を求める人
中古が向いている人
- 節税(減価償却)を優先したい人(特に高所得者)
- 表面利回りを重視し、キャッシュフローを最大化したい人
- リノベーション等で付加価値を加えて転売益を狙う人
- 割安な物件を見極める眼力と修繕費用を賄う資金がある人
まとめ
- 利回りは中古が高いが、修繕リスクと融資期間の問題がセットでついてくる
- 融資は新築が有利で、中古は築年数によって融資期間・条件が大幅に変わる
- 減価償却節税は中古が有利なケースが多い(特に築古物件の短期償却)
- 修繕コストは新築が有利だが、新築プレミアムで利回りが下がる
- 出口(売却)は新築・築浅が有利。築古は買い手が限定される
- どちらが「正解」かではなく、自分の税率・融資状況・保有目的に合わせて選ぶ
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