不動産投資の収支計算で最も重要な数字の一つが「賃料」です。しかし、現在の入居者が払っている賃料(現行賃料)と市場で新規募集できる賃料(市場相場)は異なる場合があります。この差を見抜けないと、購入後に収支が一気に悪化します。
現行賃料と市場相場の違い
物件情報に記載されている「現在の賃料」は、入居者が契約した時点の賃料です。入居者が長期在籍している場合、現在の市場相場より高い賃料を払い続けているケースがあります。
現行賃料: 10万円/月
GPI: 120万円/年
表面利回り: 8%(物件1,500万円)
→ 「高利回り!」と判断
→ 退去後に相場8万円と判明
市場相場: 8万円/月
GPI(再計算): 96万円/年
表面利回り: 6.4%(同じ物件)
→ 現実的な収益性で判断
→ FCRがローン金利を下回る可能性を確認
⚠ 退去後に賃料が下がる「賃料ダウンリスク」
長期入居者が退去した後、市場相場で再募集すると賃料が大幅に下がることがあります。特に築年数が経過した物件は、新築時の賃料より20〜30%下落していることも珍しくありません。購入時には必ず市場相場で収支を計算し直してください。
賃料相場の調べ方(5つの方法)
方法1:不動産ポータルサイトで類似物件を検索
最も手軽で現実に近い方法です。
SUUMO・HOME’S・athome で確認する項目:
- 同じ市区町村・最寄り駅・徒歩分数
- 同じ物件タイプ(1K・1LDKなど)
- 築年数が±5年以内の物件
- 専有面積が±5㎡以内の物件
注意点: ポータルの掲載賃料は「希望賃料」であり、実際の成約賃料より高い場合があります。長期掲載(2〜3ヶ月以上)の物件は入居がつかない賃料水準の可能性があります。
方法2:管理会社に直接確認する
地域の管理会社は成約事例を持っており、より現実に近い賃料水準を教えてくれます。複数の管理会社に「この物件を管理する場合、いくらで募集できるか」を聞くのが効果的です。
ℹ 売主側の管理会社の見解は楽観的になりやすい
物件を売りたい業者が紹介する管理会社は、賃料を高めに見積もることがあります。売主側と関係のない独立した管理会社にも意見を聞くことを推奨します。
方法3:レインズ・成約事例データを活用する
不動産業者はレインズ(不動産流通標準情報システム)にアクセスでき、実際の成約賃料データを確認できます。仲介業者に依頼すれば周辺の成約事例を提供してもらえます。
方法4:国土交通省「不動産情報ライブラリ」
国土交通省が公開する「不動産情報ライブラリ」では、賃料の取引事例を地図上で確認できます。ただし件数が少なく参考程度になります。
方法5:現地で空室状況を確認する
物件周辺を実際に歩き、競合物件の「入居者募集中」の張り紙やポータル掲載物件の実際の状況を確認します。空室が多いエリアは賃料の下落圧力がかかっているサインです。
賃料相場を確認する際のチェックポイント
【基本確認】
□ ポータルで類似物件(条件近似)の賃料分布を確認した
□ 長期掲載物件(2ヶ月以上)を除いた相場を把握した
□ 管理会社に直接相場を確認した
【リスク確認】
□ 現行賃料と市場相場の乖離率を計算した
□ 過去5年の賃料トレンド(下落傾向か)を確認した
□ 退去後の賃料ダウンリスクを織り込んで収支を再計算した
□ 築年数による賃料下落(経年劣化)を考慮した
賃料乖離率の計算と判断基準
賃料乖離率 = (現行賃料 − 市場相場賃料) ÷ 市場相場賃料 × 100
| 乖離率 | 状態 | 対応 |
|---|---|---|
| ±5%以内 | 相場通り | 現行賃料で収支計算してよい |
| +5〜10% | やや高め | 退去後の下落を織り込んで再計算 |
| +10〜20% | 高め | 退去後に大幅下落の可能性。慎重に判断 |
| +20%超 | 要警戒 | 退去後の収支悪化が大きい。購入価格交渉が必要 |
築年数と賃料下落の目安
物件は築年数が経過するにつれ、新築時より賃料が下落します。
| 築年数 | 新築時比の賃料水準の目安 |
|---|---|
| 築5年以内 | 90〜100% |
| 築10年 | 80〜90% |
| 築20年 | 70〜80% |
| 築30年超 | 60〜75% |
※目安であり、立地・設備・管理状況によって大きく異なります。
✓ 賃料は「今」より「退去後」で判断する
現在満室でも、全室退去して再募集した場合の賃料で収支を計算することが最も保守的で現実的な評価です。「現行賃料で高利回り」の物件は、この視点で再計算すると収益性が大きく変わることがあります。
賃料相場を入力して正確なFCRを計算する
市場相場賃料を入力するだけで、FCR・DSCR・CF・BERを自動再計算。退去後の収支シミュレーションも数字で確認できます。
無料で賃料相場を反映した収支を確認するまとめ
- 現行賃料ではなく市場相場賃料で収支を計算する
- ポータル・管理会社・成約事例の3つで相場を確認する
- 賃料乖離率+10%超は退去後の収支悪化リスク
- 築年数による賃料下落(築20年で新築比20〜30%減)を織り込む
- 「退去後に全室再募集した場合」の賃料で計算することが最も現実的
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