不動産投資で「利回りは良いのに毎月赤字」という状況が起きる根本原因は、利回りが返済能力を示していないことにあります。
利回りは「収益力」を示す指標です。しかし投資家が本当に知りたいのは「ローンを返済しながら手元にお金が残るか」です。それを直接示す指標が DSCR(Debt Service Coverage Ratio:元利金返済カバー率) です。
ℹ DSCRの定義
DSCR = NOI(純営業収益) ÷ 年間返済額(元本+利息)
NOIはローン返済を含まない物件の収益力、年間返済額は元本と利息の合計です。利回りが「収益力」を示すのに対し、DSCRは「返済できるか」を示します。
DSCRが意味すること
| DSCR | 状態 |
|---|---|
| 1.0未満 | 収益だけでは返済できない(毎月持ち出し) |
| 1.0 | 収益と返済がちょうど同額(余裕ゼロ) |
| 1.2 | 返済に対して20%の余裕がある |
| 1.3以上 | 比較的安全な水準 |
⚠ DSCR 1.0未満の意味
毎月の賃料収入だけではローンを返済できず、給与や貯金から補填し続ける状態です。
なぜ利回りではなくDSCRを見るべきか
表面利回り8%の物件でも、DSCRが1.0を下回るケースは珍しくありません。詳しくは「表面利回り8%でも赤字になる理由」で解説していますが、ここでは条件変化によるDSCRの動きを確認します。
年間返済額:約120万円
DSCR:1.30(安全圏)
月次CF:+3万円
年間返済額:約136万円
DSCR:1.15(安全ライン割れ)
月次CF:+1.7万円
→ 空室1件で即赤字転落
利回りは変わらなくても、DSCRは条件次第で大きく動きます。
安全ラインが1.2〜1.3である理由
DSCR 1.0では「今は返済できる」というだけで、リスクへのバッファがゼロです。不動産投資には次のようなリスクが常に存在します。
- 空室リスク:退去から次の入居まで賃料ゼロの期間
- 賃料下落リスク:市場環境の変化による賃料の低下
- 修繕リスク:設備故障・原状回復・大規模修繕
- 金利上昇リスク:変動金利の場合、返済額が増加
✓ 安全ラインの目安
DSCR 1.2以上を確保できていれば、空室率が多少悪化したり賃料が下落したりしても、返済に支障が出にくい状態です。
DSCR 1.0未満の物件を買うとどうなるか
毎月の持ち出しが発生し続けます。
たとえばDSCR 0.9の物件では、NOIに対して返済が10%超過しています。年間NOIが100万円なら、返済は111万円以上。差額の11万円以上を毎年自己資金から補填し続けることになります。
10年保有すれば110万円以上の持ち出し。これに加えて修繕費・空室損が重なると、売却益で回収できないケースも出てきます。
金融機関もDSCRを重視する
多くの金融機関は融資審査でDSCRを確認します。DSCR 1.2以上を融資基準とする金融機関が多く、それを下回ると融資が通りにくくなるか、条件が厳しくなります。金融機関や物件種別によっては1.3〜1.5以上を求められるケースもあります。
つまりDSCRは投資家だけでなく、金融機関も「この物件は安全か」を判断するために使う指標です。
手計算では複数シナリオの確認が現実的でない
DSCRの判断に必要な試算は1パターンでは足りません。
- 金利が**1%・2%・3%**に上昇した場合のDSCR
- 空室率が**5%・10%・15%・20%**に悪化した場合のDSCR
- 賃料が**3%・5%・10%**下落した場合のDSCR
これらを組み合わせると数十パターンになります。手計算で全パターンを試算し、さらに複数物件を比較しながら判断するのは、現実的ではありません。
「DSCR 1.18だから大丈夫」という判断が、金利+1%・空室率+10%の同時発生で一気に1.0を割り込む——この見落としが、投資判断の最大のリスクのひとつです。
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DSCRが1.2以上かチェックするまとめ
- DSCRは「利回り」ではなく「返済できるか」を示す指標
- DSCR 1.0未満は毎月持ち出し、1.0は余裕ゼロ
- 安全ラインの目安は 1.2〜1.3以上
- 金利上昇・空室悪化でDSCRは大きく変化する
- 金融機関の融資審査でも重視される
- 複数シナリオの試算は手計算では現実的でない
- これらの数値はあくまで一例であり、物件条件・融資条件によって大きく変わります
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