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指標解説

DSCRとBERの違いとは?返済余力と空室耐性の見方を解説

DSCRとBERはどちらも収益の安全性を見る指標ですが、測る対象が異なります。返済余力(DSCR)と空室耐性(BER)の違い・計算方法・安全ラインを解説します。

「DSCRが1.2あるから安全」「BERが75%だから問題ない」——どちらも不動産投資の安全性を評価する指標ですが、何を測っているかが異なります。両者の違いと使い分けを理解することで、収益リスクをより精密に把握できます。

2指標の概要

指標名称何を測るか計算式
DSCRDebt Service Coverage Ratio(返済カバー率)「現在の収益でローンを返済できる余力」NOI ÷ ADS
BERBreak-Even Rate(損益分岐入居率)「何%の入居率があればローンを返済できるか」ADS ÷ GPI

DSCR(返済余力)

定義と計算式

DSCR = NOI ÷ ADS
  • NOI:純営業収益(賃料 − OPEx)
  • ADS:年間元利返済額(Annual Debt Service)

意味

DSCRは「現在の収益でローン返済をどれだけ余裕を持って賄えるか」を示します。

DSCR状態
2.0以上余裕十分
1.2〜2.0良好
1.0〜1.2最低限(リスクあり)
1.0未満収入だけでは返済不可能。要注意

特徴と限界

  • 現在の入居率を前提とした収益性で計算する
  • 空室率が変化すると、NOIが変わりDSCRも変化する
  • 「今の収益状況」での返済余力を示すが、「空室がこれ以上悪化したらどうなるか」は直接わからない

BER(損益分岐入居率)

定義と計算式

BER = ADS ÷ GPI(年間満室時収入)

意味

BERは「最低何%入居していればローンを返済できるか」という損益分岐点の入居率です。

例:

GPI:  120万円(月10万円 × 12ヶ月)
ADS:   80万円
BER = 80万円 ÷ 120万円 = 約66.7%

入居率が66.7%以上であればローン返済ができる、という意味です(OPExを考慮した「赤字にならない入居率」はさらに高くなります)。

特徴と使い方

  • 「どこまで空室が増えても耐えられるか」の耐性を示す
  • エリアの実際の平均入居率と比較して安全余裕度を確認する
  • BER < エリア平均入居率 であれば、エリアの平均的な状況でも返済できることを意味する

ℹ BERはOPExを除いた単純計算に注意

上記の計算式は「ADS ÷ GPI」のシンプルな計算です。OPEx(運営費)まで含めて「CFが0になる損益分岐点」を見るなら、条件は NOI = ADS になります。これは通常、ADS ÷ GPI の単純BERより厳しい(必要入居率が高い)値になります。まずはシンプルBERで比較し、最終判断ではNOIベースでも確認するのが実務的です。


DSCRとBERの違いを一言で言うと

DSCR:「今の収益でどれだけ返済に余裕があるか」
BER :「どこまで空室が増えても返済できるか」

DSCRは「現在の余裕度」、BERは「将来の耐性」を測ります。


同じ物件でDSCRとBERがどう変わるか

前提:
GPI: 120万円
ADS:  80万円

ケースA:現在満室(入居率100%)
NOI = 120万円 × 100% − 24万円(OPEx 20%)= 96万円
DSCR = 96万円 ÷ 80万円 = 1.20
BER = 80万円 ÷ 120万円 = 66.7%

ケースB:空室20%(入居率80%)
NOI = 120万円 × 80% − 24万円 × 0.8 = 96万円 − 19.2万円 = 76.8万円
DSCR = 76.8万円 ÷ 80万円 = 0.96(危険)
BER = 変わらず 66.7%(物件固有の数値)

空室率が20%になると、DSCR は1.20から0.96に低下しますが、BER(66.7%)は変わりません。BER は物件の固有の耐性を示す静的な指標、DSCR は現在の入居状況に連動して変化する動的な指標です。

DSCRだけ確認(不完全)

DSCR: 1.3(良好)
→ 「安全!」と判断
BER: 未確認
エリア平均入居率: 80%
BER(実際は): 85%
→ エリア平均を超えるBER。実は危険

DSCRとBERを両方確認(完全)

DSCR: 1.3(良好) ← 現在の余裕度
BER: 85% ← エリア平均(80%)を超える
→ エリア平均の空室率では赤字になる
→ DSCRが良くても空室耐性が低い物件と判断
→ 追加調査・価格交渉を検討


2指標の使い分けまとめ

確認したいこと使う指標
今の収益でローンを返せるかDSCR
空室が増えても耐えられるかBER
入居率が何%まで下がると危険かBER
収益状況が変わったときの影響DSCR(入居率を変えて再計算)

✓ 両方が安全ラインを超えていることを確認する

DSCR ≥ 1.2 かつ BER < エリア平均入居率、この両方を満たす物件が収益面での安全性が高いと言えます。片方だけでは不完全な評価になります。

DSCRとBERを同時に計算して安全性を確認する

物件情報を入力するだけで、DSCR・BER・FCRを自動計算。現在の余裕度と空室耐性を数字でセット確認できます。

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まとめ

  • DSCR = NOI ÷ ADS。現在の収益でのローン返済余力(動的)
  • BER = ADS ÷ GPI。空室耐性の損益分岐入居率(静的)
  • DSCRは「今の余裕度」、BERは「将来の耐性」
  • 安全基準:DSCR ≥ 1.2 かつ BER < エリア平均入居率
  • 両方を確認しないと収益リスクの全体像は把握できない

関連記事:DSCRとは? / BERとは? / NOIとCFの違い

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