不動産投資で失敗する人には、共通の数字パターンがあります。「感覚的に判断した」「営業資料を信じた」という話はよく聞きますが、具体的にどの数字を見落としているのかを整理します。
1. 表面利回りだけで判断し、実質利回りを計算しない
最も多い失敗パターンです。
表面利回り 8%
→ 「良さそう」→ 購入
実質利回り 4%
DSCR 1.05(危険水域)
月次CF +数千円(税引前)
→ 実質ほぼ赤字
表面利回りは管理費・修繕費・税金・空室損をいっさい考慮しません。実質利回りは表面利回りの40〜60%程度になるケースが多く、ローン返済を加えると毎月赤字という状況になりかねません。
詳しくは「表面利回り8%でも赤字になる理由」を参照してください。
対策: 物件を検討する前に実質利回りとキャッシュフローを必ず計算する。
2. DSCR 1.0未満でも「なんとかなる」と買う
⚠ DSCR 0.92の物件を10年保有すると
毎月1万円の持ち出し × 12ヶ月 = 年12万円
+ 退去・原状回復費用:20〜30万円
+ 設備故障(エアコン等):10〜15万円
+ 空室期間2ヶ月分の機会損失
→ 1年で50〜70万円の持ち出し。10年で500〜700万円。
「毎月1万円の持ち出しだから許容範囲」という判断が、修繕・空室と重なることで取り返しのつかない損失になります。DSCRの詳細は「DSCRとは?」で解説しています。
対策: DSCR 1.2以上を購入の最低条件にする。下回る物件は価格交渉か見送り。
3. 金利上昇・空室悪化のシナリオを検討しない
金利:2%
空室率:10%
DSCR:1.18(ギリギリOK)
月次CF:+1.5万円
金利:3%
空室率:20%
DSCR:0.97(返済不能水域)
月次CF:▲2万円(毎月持ち出し)
「今は大丈夫」という判断は、条件が変化した瞬間に崩れます。
対策: 金利+1%・空室率+10%・賃料-5%の3シナリオでDSCRを計算し、すべてで1.0以上を確認する。
4. 節税効果を収益と混同する
⚠ 節税を収益と混同すると危険
毎月CF:▲3万円 → 年間持ち出し36万円
節税還付:年間36万円
「プラスマイナスゼロ」に見えるが…
減価償却が終わると節税効果はゼロになり、赤字だけが残ります。
節税効果そのものは有効な戦略です。ただし、キャッシュフローがマイナスの状態で節税を優先するのは本末転倒になります。節税効果は所得税の還付であり、現金収支の赤字を直接補填するものではありません。減価償却が終わると節税効果がなくなり、売却時に譲渡税が発生して節税分を上回る課税になるケースもあります。
対策: まずキャッシュフロー単体でプラスになることを確認する。節税はその上で活用する追加メリットと位置づける。
5. 出口価格を想定せず、含み損に気づかない
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 購入価格 | 2,500万円 |
| 10年後の実際の市場価格 | 2,000万円 |
| 売却損 | ▲500万円 |
| 10年間のCF合計 | +200万円 |
| トータル損益 | ▲300万円 |
キャッシュフローがプラスでも、売却損がそれを上回れば投資全体はマイナスです。
✓ 出口戦略の基本
購入前に「10年後にいくらで売れるか」を保守的に試算する。少なくとも購入価格の80%で売れる前提でトータルリターンを計算する。
対策: 購入前に保守的な売却価格でトータルリターンを試算する。
共通する根本原因:複数の数字を同時に見ていない
これらの失敗に共通するのは、一つの数字しか見ていないことです。
- 表面利回りだけ → 実質利回り・DSCRを見ていない
- 現在のDSCRだけ → 金利上昇・空室悪化シナリオを見ていない
- 節税効果だけ → キャッシュフローを見ていない
- 毎月収支だけ → 売却損を見ていない
手計算では複数指標の同時確認が現実的でない
実質利回り・NOI・DSCR・キャッシュフロー・感度分析を手計算で全部やると、1物件あたり1〜2時間かかります。さらに次の条件を同時に変えながら確認する必要があります。
- 金利が1%・2%・3%に上昇した場合
- 空室率が10%・15%・20%に悪化した場合
- 賃料が3%・5%・10%下落した場合
これらの組み合わせは数十パターンになります。一つの前提条件を変えるたびに全部やり直しになり、複数物件を比較しながら判断するのは、現実的ではありません。
この確認を省略した結果、「今は大丈夫」という判断が数年後に大きな損失につながる——それがここで紹介した失敗パターンの正体です。
この条件で失敗するか、今すぐ検証できますか?
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この条件で失敗するか検証するまとめ
| 失敗パターン | 見落としている数字 | 対策 |
|---|---|---|
| 表面利回りだけで判断 | 実質利回り・DSCR・CF | 3指標をセットで確認 |
| DSCR 1.0未満を許容 | 修繕・空室の重複リスク | DSCR 1.2以上を最低条件に |
| 現在の条件だけ確認 | 金利上昇・空室悪化シナリオ | 3シナリオでDSCR確認 |
| 節税効果を収益と混同 | 現金収支・減価償却終了後 | CF単体でプラスを確認 |
| 売却価格を楽観視 | トータルリターン | 保守的な売却価格で試算 |
これらの数値はあくまで一例です。地域・築年数・物件種別・融資条件によって大きく変わります。個別の投資判断は、実際の物件条件をもとに行ってください。
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