不動産投資でローンを使う場合、銀行が最も重視する指標の一つが LTV(Loan to Value Ratio:ローン残高対資産価値比率) です。表面利回りやDSCRと並んで、融資審査・追加融資・売却タイミングの判断に直結します。
LTVの計算式
LTV(%) = ローン残高 ÷ 物件の現在価値 × 100
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ローン残高 | 現時点で残っている元本の合計 |
| 物件の現在価値 | 市場での売却想定額(査定額) |
購入時点では「ローン残高 ÷ 物件価格」で近似できますが、時間が経つにつれてローン残高と物件価値の両方が変化するため、定期的に確認することが重要です。
具体的な計算例
物件価格2,000万円・頭金400万円(20%)・ローン1,600万円で購入した場合:
購入直後のLTV:
LTV = 1,600万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 80%
10年後(元本返済が進み、物件価値が1,800万円に下落した場合):
ローン残高(30年・2.5%・10年経過後): 約1,250万円
LTV = 1,250万円 ÷ 1,800万円 × 100 ≈ 69%
✓ LTVが下がるほど財務的に安全
LTVが低い = 物件に対して純資産(エクイティ)が多い状態です。追加融資を受けやすく、売却時の余裕も大きくなります。
LTVの目安
| LTV | 状態 |
|---|---|
| 60%以下 | 安全圏。追加融資・借り換えがしやすい |
| 60〜80% | 標準的な水準 |
| 80〜90% | 要注意。価格下落で含み損が出やすい |
| 90%超 | 危険圏。売却しても残債が残るリスク |
※目安は金融機関・物件種別・エリアによって異なります。
融資審査でのLTVの使われ方
銀行は新規融資の審査時に、申込者が保有する既存物件のLTVも確認します。
LTVが低い場合(エクイティが多い):
- 既存物件を担保に追加融資を受けやすい
- 金利優遇交渉の余地が広がる
- ポートフォリオ拡大がしやすい
LTVが高い場合:
- 追加融資が難しくなる
- 金利上昇・賃料下落時の耐性が弱い
- 物件価格下落で「オーバーローン」状態になるリスク
⚠ オーバーローンとは
ローン残高が物件の現在価値を上回る状態(LTV 100%超)をオーバーローンといいます。この状態では売却してもローンが完済できず、自己資金を持ち出す必要があります。築古・地方物件は価格下落リスクが高く、特に注意が必要です。
LTVとDSCR・CCRとの関係
LTV: 100%
エクイティ: 0円
DSCR: 1.25(低め)
価格下落リスク: 高い
LTV: 80%
エクイティ: 400万円
DSCR: 1.57(余裕あり)
価格下落リスク: 低い
LTVを下げるとDSCRが改善し、CCRは下がります。3つの指標はトレードオフの関係にあり、バランスを見て判断することが重要です。
売却タイミングの判断にも使う
LTVは「今売れるか」の判断にも使えます。
売却可能余力 = 物件価値 − ローン残高 − 売却費用(3〜5%)
売却費用(仲介手数料・登記費用など)を差し引いてもプラスになるかどうかを確認します。LTVが高い状態で市況が悪化すると、売りたくても売れない状況になることがあります。
ℹ LTVは定期的に見直す
不動産価格は市況によって変動します。購入から数年経過したら、査定額の確認とLTVの再計算を行いましょう。特に金利上昇局面では、LTVの悪化に早めに気づくことが重要です。
手計算では把握しにくい
LTVを正確に計算するには、現時点のローン残高(元本)と物件の現在価値の両方が必要です。ローン残高は返済スケジュールを追わなければわからず、物件価値は定期的な査定が必要です。さらに複数物件を保有する場合、ポートフォリオ全体のLTVを管理するのはさらに複雑になります。
まとめ
- LTV = ローン残高 ÷ 物件価値 × 100。低いほど財務的に安全
- 60%以下が安全圏。80%超は価格下落リスクに注意
- 融資審査・追加融資・売却判断の3場面で重要な指標
- オーバーローン(LTV 100%超)は売却しても残債が残る危険な状態
- LTV・DSCR・CCRは連動しており、3つをバランスよく見ることが重要
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